20歳のころの私は。


一束50円くらいのくだらない男でした。尖がるだけ尖がってあちこちぶつけて蹴って殴って。


夜のお嬢様たちとお酒を飲んでいるときの出来事です。京都にも部落はあるのですが、そこの出身の客が帰ったあと、他の客とお嬢様たちがひそひそ話というには収まらない感じで「あの人は部落だからねー♪」と盛り上がりだしました。それを聞いてなぜか。


「オレも部落じゃ!!」


後日たっぷりと弁償させられましたので、あれやこれや傷つけたようですが何も憶えていません。生まれて初めてキレることを知った夜でした。それから動けなくなるまでキレ続けてどこまでイクんだよって感じだったのですが、とりあえず生きてこれました。たぶんそのときに私は運勢のほとんどを使い切ってしまった気がするので、今の運の無さにもそれはそれで納得しているのですが(笑)。


それから12年。今も私は部落民であることを本音の部分で受け入れられないでいます。キレることでしか向き合えないことが悲しくもあります。まったく成長していません。


でも、あのときほんとうは泣きたかった。


あのとき堪えてしまったので、それ以来、泣くことができずにいます。今さらながら泣いておけばよかったって思います。


ちゃんと泣いておけばちゃんと笑うことができたんだろうな。