名前も知らない、顔も知らない。


少し前からエヴァンゲリオンにはまりました。


10年前に完結した物語なのですが、私が見たのはこれが初回。もしリアルタイムで見ていたら20代の最初のほうなのですが、三十路過ぎて見るってことも運命なのかなとなんとなく。で、それがかなりヒットして面白いです。


テーマはたぶん『原理』なのかなと思います。色んな要素がからんでるので適当な言葉が思い浮かびません。まぁ知ってる人のほうが多いと思いますが感想など。間違ってたら教えてください。


原始生命のアダムとリリスが生まれて、地球の生命としてはどちらか一方て状況だった。とりあえずは、リリスから生まれた人間が優先権を得た感のある地球。だけどその争いに決着がついたわけでもなんでもなくて、使徒って呼ばれるアダムから生まれた(?)のがやってくる予言があって、それが死海文書といわれる聖書の欠けた部分に書いてあった。で、人間はアダムまで見つけてしまったのでえらい騒ぎになった。なんとかしよう!てことで思いついたのはアダムとリリスを一緒にしてしまうアイデアで、それを実行したら地軸の角度をずらせてしまうほどの大爆発がドカーン。それがセカンドインパクトって呼ばれてて、それから15年後から始まる物語。


んで、予言どおり使徒がやってくる。この使徒ってのにはそれぞれ旧約聖書にでてくる天使の名前がつけられてる。これが厄介で、いわゆる兵器がまったく役に立たない。ATフィールドていう障壁に守られてて物理的ダメージを受けつけない。ところがさすが人間、エヴァンゲリオンていうヒト型の生き物みたいなロボットみたいな、なにせ使徒と戦えるのをちゃっかり作っていた。このエヴァが強いのは使途と同じくATフィールドを使えるからなのだけれど、子供しか操ることができない代物。で、エヴァンゲリオンって何?となるんだけれど、アダムのカケラから人間が作ったものらしい。99%くらいまでが人の遺伝子と同じだそうで、ここらでようやく「生き物なのね」とわかったのですが、ちょっとまてよ、と。


アダムから生まれた使徒が使うATフィールドはアダムから作ったエヴァンゲリオンも同じく使う。だからこそ使徒とやりあえるんだけど、エヴァンゲリオンと人の遺伝子はほぼ同じ。じゃ、人と使徒もほとんど同じやん?みたいな感じになってくる。そこまでいくと、ATフィールドっていったい何?てことになるのだけど、実はそれがこの物語の最大テーマだと思った。実は秘密裏に人類補完計画なんてでかいプロジェクトが進行していて、そのプロジェクトのほんの一部がエヴァンゲリオンだったり使徒だったりする。


ユダヤ(?)では、アダムってのは神が地上の塵から最初につくった人になる予定のもので、アダムが嫉妬したので神はリリスをつくった。けどリリスはアダムに比べて不純な塵からできていたから、悪魔とセックスして毎日子供を産み落とした。それがリリン。予定外のできごとに困った神はアダムの肋骨からイヴをつくった。


人間はリリスから生まれたもので、つまりリリン。使徒はアダムから生まれたもので、つまりイヴ。エヴァンゲリオンは人がアダムからつくったもので、これも同じくイヴ。人がイヴをつくったということは人が神に等しい行為をしたてことで、もともと不純なリリスと悪魔のセックスで生まれたリリン=人類の補完が最終目的。物語にでてくる最後の使徒のカヲルは「僕らにとって生と死は等価値なんだ」といいます。なるほど、使徒はアダムからのみ生まれたのもですから、直系の神の子。それに比べて人は悪魔との間に生まれたリリンですから、別の要素がはいったおかげで人にとっての生と死は明確に別ものになるのか、と。


神からすれば、使徒も人も孫のようなものなんだろうけど、悪魔との間に生まれた人間はとうとう神の真似してイヴまでつくってしまうようになってしまっていて。しかも知恵と引き換えに失ったものがあるぞ、なんて妄想にまでかられていて、その失ったものを埋めるために人類補完計画までたてていた。それじゃ補完ってのはいったい何?てことになるのだけど、その補完計画も2通りの考え方で進行していて、それぞれの考え方の違いで人間同士が対立している。対立軸はとどのつまりATフィールドをどう捉えるかの違いなのだと思った。


『意思』と捉えるか、『自我』と捉えるか。


なんというか、無意識の壁みたいなものをイメージしました。それさえなければ容易に人と人とは分かり合える、みたいなもの。けれど、それがあるからこそ人は人として存在できるというような不可逆的なもの。物語の中でも、ATフィールドを取り払うものはアンチATフィールドで結局のところ足すか引く、若しくは掛けるか割るかしないと取り払えないもの、つまりは生きる人間にとっては不自然なものとして描かれていたような気がします。


心から欲しいと望んでいることは真実なのだけれど、本当に手にしてしまったら持て余してしまってどうすればいいのかわからなくなってしまう。そういう種類のものなのかなと思いました。