過去の疑問は未来の疑い。

somali2005-03-06



野中広務 差別と権力」  魚住昭 著


野中広務ってのは亡くなった小渕恵三が総理だったときに官房長官を務めてた人。政治の世界でかなりの実力者。で、彼は同和地区出身、つまり部落民。彼のメッセージは、「人間はなした仕事によって評価をされるのだ。そういう道筋を俺がひこう」っていうもんだ。そうやって政治の世界を歩んで、総理大臣になれる一歩手前まで登った人生を、政治の闇、部落差別の闇、人間の闇って視点から書いてある。その中で彼は、差別ってのを悲しんでいるし憎んでいる。戦争と部落差別の中を生きてきた人だから平和と平等ってありがたさを身にしみている、まなざしも優しい。んで、政治の道を歩む中で、彼は差別を巧みに利用してくんだ。


差別を利用する?うん、逆差別。昨日とおとといの日記のテーマ。


昭和になって、オィオィ俺らって平等に扱われてないジャンって部落の声がデカくなった。みんな平等じゃないのかい?それって誰の責任やねん?ってことなった。そんなときにあったのがオールロマンス事件。オールロマンスって雑誌に「特殊部落」って小説が掲載されたんだけど、悪意的な差別描写。それを書いたのが役所の職員。つまり役人。


テメーら役人がそんなつもりでおったんかい!?ってみんな怒った。んで自分の目で確かめろって部落につれてきたら、マジッすかって感じにヒドかった。すったもんだした結果、「部落差別は国の責任です。国民みんなで解決しましょう!」って結論になった。


で、キレイごとばかりなわけがない。


おっ、責任認めたね?なら、誠意ってなんだね?聞かせておくれよお兄さん、って仁義無き戦い。必要なものがあるんだと言った。それを行政闘争って呼んでいる。闘争ってカナリ熱い言葉だよな・・ちょっと引いちゃう怖い感じ、けど実際怖かった。ってか、それだけ勢いが凄かったんだ。字も読めない、仕事ない、んで貧乏な部落民。「差別だー!」って叫べば金になるっていわれて集まる。「ウオー!金貰えっぞー!」ってみんなでハッスル開始。「金ってマジマジ!?」って具合にどんどんハッスル、未だにハッスル・・。


で、噂は広まる。「部落は怖い」ってステキな噂。


そうです、貧乏人が怒ったら怖いんです!って話じゃない。根っこにあるのは、差別で金儲けしてんじゃないの?って素朴な疑問。部落だけの特別扱いは他への差別になってんじゃないのって意味で、それを逆差別っていっている。


差別が差別を呼んだっていう悲しい結果なんだ。で、その原因の一つは解放運動。もちろん部落民じゃない人たちも便乗したけど、大きな流れは解放運動。3/3の日記で書いた「今も”続いてる”んじゃなくて今も”ある”」っていうのはそういうコト。解放運動も原因をつくってきた当事者なんだって意味で書いた。要はお金、お金の話は必ずこじれる。しかも、財布の中身はみんなの税金だってんだからお手上げ状態。怖いって噂ですんでラッキーなのかも。


功罪って言葉がある。イイこともワルいこともしたって意味。オイラなりに解放運動の功罪を考えながら書いている。最先端のパソコンも半年たてば型遅れ。差別ってのは、その瞬間で切り取った姿がずーっと続くもんじゃない。今この瞬間もどんどん変化していくもの。だって歴史ってそういうものジャン。現在(いま)の積み重ねが未来をつくる。


で、野中広務の話に戻る。彼が利用したのは差別ってものから生まれる人間心理。なにより政治家は票を集めにゃただの人。彼が部落民ってことは票集めには不利な状況。だけど彼はハネ返す。起死回生の逆転発想、その秘策はというと・・、


「自分を売り込むときは部落を裏切ったときが一番よう売り込める。」


お見事。まいりました <(_ _)>